2015年8月24日月曜日

私の目には、あなたは高価で尊い


8月もあとわずかとなり、北海道はもう秋です。
6年前のギラギラした夏の日、その日は病院へ行く日でしたが、
具合が悪く、やっとの思いで主人の車に乗り込みました。
病院まで50分。程なく過呼吸になってしまい、ハァハァしながら精神的にも暗いほうへ追い込まれていきました。苦しさにあえぎながら目を開けると、
車のサイドミラーに私が写っていました。
美しさのひとかけらもない醜くゆがんだ顔 ! なんてひどい顔 !
ああ 私はこの社会から見放された者 !
私をかえりみてくれる人など誰もいない !
もう50歳のこんな病気の私に何の生きる希望があるだろうか !
と自分に絶望しました。

病院に着いても過呼吸くらいでは優先してもらえません。
待っている間に、手足のしびれが強くなり硬直してきて歩くのもままならなくなりました。
看護師にも医師にも心なしか冷たく接せられた気がして、情けない気持ちでいっぱいでした。

診察を終えて受付で待っていたその時 「体 こわいのかい?」 と静かなやさしい声がしました。こわいとは、北海道で苦しいとかつらいと言う意味です。
声のほうを見ると、隣に、黒の山高帽に黒のスーツといういで立ちの、スマートできりっとした老紳士が哀れむように私を見ていました。そして、「私は85歳だからもういいが、あなたは若くて ! 美人だ ! もったいない !」
ときっぱり宣言するように言い放ったのです。

私はびっくりしてしまい。言われた言葉の意味を思い巡らしました。
そして、聖書の言葉に結びつきました。それは
「あなたを造り出した方、主はこうおおせられる。私の目にはあなたは高価で尊い。
わたしはあなたを愛している。」イザヤ43章1節4節 新改訳

ついさっき、私が車の中で思っていたことに、神様はこの老紳士を通して完璧に答えを出してくださったのです。大きな温かい愛に包まれ、失望していた心の中に一筋の光が差し込みました。

同じ病の者しか分からない苦しみを分かってもらい、励ましてくださった老紳士と手を握り合ってお別れしました。本当にうれしい出来事でした。
それから、生まれて初めて美人だと言われたことも、とってもうれしかったのです !




この前にブログを書いたのは春で、モーツアルトのクラリネット5重奏曲でしたが、
今日は秋らしく、少しメランコリックで美しい、ブラームスのクラリネット5重奏曲をお聴きください。